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◆パネルディスカッション

 

テーマ:「人・まち・環境にやさしいバス〜これからの交通を考える〜」

 

●藤田コーディネーター

 

バスシンポジウム’96「人・まち・環境にやさしいバス」、これからパネルディスカッションに移りたいと思います。改めて申しますが、本日9月20日は、日本のバスの誕生日であります。明治36年のこの日に京都市ではじめての乗合自動車が走りだしました。6人乗りの蒸気自動車だったそうです。以来93年間常に地域の足となり、多くの人々に親しまれてきたバスですが、日本でもモータリゼーションがはじまって以来の最近30年は、サラリーマンが月賦で新車を購入できるようになりました。丁度東京オリンピック直後くらいからでしょうか。この30年というものは、バスにとって年々困難が増し加える歴史を刻む時代となりました。即ち、交通渋滞、交通事故、環境汚染等々、モータリゼーションの負の部分がバスの利用価値を削ぐ事態となっています。
そこで本日は、バスの誕生日に因んで、「人・まち・環境にやさしいバス」をめざし、各方面の方に議論いただき、今後の都市交通のあり方におけるバスの位置づけ等について探っていきたいと思います。
まずは、議論の手がかりを得たいと思い、このVTRを用意しましたので会場の皆さんと共にご覧いただきたいと思います。

 

―VTR上映―

 

このパネルディスカッション「人・まち・環境にやさしいバス」の実現をめざしてですが、議論の順序としまして、バスを取り巻く状況をしっかり把握しておく必要があるという意味で、第一に日本における都市交通の現状についてお話いただき、その中で公共交通の利用量を上げるという選択があってもよいのではないかという2番目の柱立てをしたいと思います。3番目として、バスの課題と可能性について大いに議論し、そして4番目の柱として、結論になるであろう日本のバスや都市交通の将来像について議論して頂こうという段取りで進めて行きたいと思います。
太田さん、基調講演をこのパネルディスカッションの前にしていただきましたが、都市交通の現状と問題点をどのように捉えていらっしゃいますか。

 

●太田先生

 

都市交通と言いましても大都市と地方都市とでは随分話は異なりますが、基本的に戦後の一番の大きな変化というのは、やはりモータリゼーションによる車社会が定着したということでしょう。一般的に車社会ということを昔に比べますと、便利にあちらこちらに行けるというモビリティといっていますが、大変大きなメリットであるといえます。
問題は、あまりにも急激すぎ、支えるためのインフラが充分に追いつかないということで、便利さ故に皆が一斉に車を使うと極めて不便になります。車を使えない特定のお年寄りや子供等に対して、公共交通の衰退という意味で大きな不便さを与え、社会的な不公平となっていることが大きな問題といえます。車依存性の社会をもう一度見直すというのが大きな課題の一つのではないかと思います。

 

 

 

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